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【D-4】レモンの味

使用したお題(複数選択可)・・・アイス, あつい

いつもと文体、話の雰囲気などを・・・ほとんど変えていない

一言コメント・・・楽しんで書けました!よろしくお願いします。

備考(作品の注意事項など)・・・なし


「あっつぅ…!」
 ギラギラと夏の日差しが照り付けている。右手には日傘、左手にはコンビニ袋、背中にはパンパンに膨れたリュックを背負って、自分はよたよた歩いていた。
「ふぅ。早くしないと、アイス溶けちゃうっす…」
 今日は連休初日。いつも忙しくしている獄さんだけれど、今年はカレンダー通りに休みを取ってくれた。お付き合いを始めて二回目の夏だ。この夏休みは、獄さんの家でお世話になる。
「アイスがお土産って、ちょっと子供っぽいすかね…」
 十四くんの選んだものなら何でも嬉しいよ!と、リュックの中のアマンダが言ってくれている。うん、大丈夫…だよね!
 獄さんは迎えに行くと言ってくれたけど、子供扱いされているようで、一人で行けます!となんとなく意地を張ってしまった。正直こんなに暑い日だとは思わなかった。あまりの暑さにだんだん歩幅も狭くなる。
「アイスより先に自分が溶けちゃうっす…急ごう!」
 ほっぺたをペチン!と叩いて、気合いを入れた。一歩進もうと顔を上げたその時、見知った影がこちらに手を振っていた。
 あんなに厄介だった夏の日差しが、菫色の瞳をキラキラと反射させる。
「ひ、ひとやさあん!」
「よお、そろそろくる頃かと思ったから」
 バイカラーのシャツに、ゆるめのパンツ。ピシッと決めたスーツに見慣れているから、慣れない姿にドキドキして。
 ギュッと抱きつきたい想いを抑えて、少し汗をかいたコンビニの袋を差し出した。
「こ、これ、おみやげっす」
「おっ!サンキュ、家に何もねえし、ついでに買って帰ろうと思ってたとこだ」
 にっと獄さんが笑って、袋の中を覗き込む。
「十四、レモン好きだったか?」
 レモン味のアイスがごろごろ入った袋と交互にこちらを見る。
 や、やっぱりおかしいっすか…?何て言おう、こう言ったら変かな、気持ち悪いかな…と言葉を選んでいたはずなのに、つい口が動いてしまった。
「キスの味…っす、初めての!」
 はっきり言ってしまった…
 せっかくの夏休み、一緒に過ごせることが嬉しくて、もっと近づきたくて。
 いつか何かのCMで聞いた"初恋の味"はレモンだった。
 この暑さだし、さっぱりしたかった気持ちもある。でもいい感じになれたらいいな、なんて下心もあった。だんだん恥ずかしさが込み上げてきて、視線が落ちていく。…獄さん、どんな顔してるんだろう。引いちゃった、かな。
「甘酸っぱいのもいいが、甘ったるいのも好きだぜ。珈琲によく合う」
 ぽん、と頭に手が乗った。
 分厚い手のひらがするりと肩に降りて、ひょい、と背中の荷物を奪った。
「…あっ!獄さん、待って!」
 早く家行くぞ、と獄さんはすたすた歩いていく。
 慌てて隣に駆け寄ると、耳のてっぺんの方が赤く染まっていた。

 

作者・・・しなの

いつもと変えたところ、意識したところなど(自由回答)・・・拙いながらも以前書いた時より伝わりやすいように…と意識してかきました…!なんとなく汲み取っていただけていると嬉しいです。

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